上司が押さえておくべき部下とのコミュニケーション強化について
コミュニケーション
先日の日経新聞に「伝わらないを克服しよう」という記事がありましたのでご存知の方も多いと思います。内容は仕事のコミュニケーションを大きく左右するのが「話し方」でありホウレンソウや部下への指示、プレゼンテーションなど、様々な場面でそのスキルが試されるが、思ったように伝わらないと悩む人が多い、伝わるコツはPREP法という技術を使って結論→理由→根拠→まとめ、という順番で論理的に話すことだという記事でした。
PREP法ですが、これはこれですばらしいことなので是非行って行きたいものです。しかし、多くの場合もうひとつ大切なことが抜けがちです。それは・・聞き方について。話し方教室はよく聞きますが聞き方教室というのはあまりなじみがありません。最近コーチングの手法が広まってから聞き方という言葉を聞くことも少しでてきましたが、コミュニケーションにおける圧倒的な重要度、頻度は話し方に集約されています。
上司と部下の関係は、力の強い立場の人と弱い立場の人がひとつの方向性や目的に向かって情報や意識を共有するということです。力関係が元々違うのですから、弱者が正しいと思う提案や内容を力の強い人に向かって説得するというのは大変なことです。上の立場は経験や役職からそもそも「自分は正しい!」と思い込んでいます。「未熟なものの意見など取り入れられるか」が根底にありながら歩み寄ろうとするので、伝えるにはどうするか?ということがずっと悩みのトップに出てくることになります。
部下の上司に対するアンケートを実施したことがありますが、部下は常に「もっと話を聞いて欲しい!」という声が1位に出てきます。それに対して上司は常に「部下の話を十分聞いている」という回答になっています。この意識のギャップがある限り、本質的な問題は解決されないことになります。
ここでひとつ考えたいのが上司の役割についてです。部下が説明説得の方法を賢明に考えると同様に、上司は上司で話を受け取る努力をしなければなりません。「上司の給与の50%は部下の話の聞き賃」というコトバがあるくらいです。
聞けない理由のひとつに身体的なメカニズムもあります。話すスピードと聞くスピードには相当なギャップがあります。上司が聞く側になったときは「もっと要領よく話しなさい!」、クレームに対応するような重い話になると「結論は!」「客の怒り具合は!」「打ち手はどうなっている!」と矢継ぎ早に攻め立てられることになります。
上司は「言いまかす」世界から脱皮して「聞き負かす」達人になるくらいでちょうどよいといえます。齢を重ねてそれなりの立場になっている場合でさえ自分のことばかり話し、人の話を聞かない、聞けないという人は大勢います。
聞くというのはすべてに通じることです。修行であり忍耐のいることですが、等身大の耳を持つ「巨耳細口」(相手を受け入れる、体、心で誠心誠意聞くという世界観を持つことが大切です。その上に全身の細胞全てを耳にして聞く「多耳小口」という世界があり、60兆の細胞を耳にしていく姿勢で構えると、今まで聞こえなかった世界が聞こえてくるようになります。物事の本質を見抜く眼力の世界への扉が開かれます。目には見えない部下の地味な努力が見えてくるかもしれませんし、クレームの起こった背景や隠れた本質が聞こえてくるかもしれません。
最終的にはどう聞くかは自分流で確立していくしかありません。しかしその工夫と意識をもって全身を耳にする構えを持ち続けていると自分の器が磨かれていくことを実感できます。単に上に立つ人が尊敬されるのではなく、全身を耳にして本質を捉えようと修行・研鑽の意識で部下と接する人が自身の器を磨き尊敬されるのです。こうした努力が小さな組織においては特に重要でコミュニケーション力をあげていくのです。
上記の記事は弊社の根幹となる哲学「喜びの帝王学」を基にしています。