経営者が注意しなければならない組織に蔓延する病
企業に静かに広がる病
熱中症の季節となりました。先日も私のセミナーに参加予定だった20歳代の経営者が熱中症で病院に運ばれて急遽、欠席となりました。この方は学生時代に柔道で鳴らした猛者ですが、熱中症には年齢も体力も関係ないことを実感しました。皆様も気をつけてください。
さて本題ですが、熱中症と同じ位、あるいはそれ以上に危険な病ともいうべき企業病があります。組織を成長させる原動力には行動力、決断力、あるいは新しいことに挑戦する情熱など色々あります。そうしたパワーの源を根絶やしにするのが「否定語」の世界観です。弊社の文化では「ワカッチャッタ世界の住民」ともいっています。
例えば、少し見聞きしただけですぐ「そんなの知っているよ!」「これはもう学んだ」「聞いたことある」など非常に薄い知識・情報の中だけで理解した気になってしまう傾向があります。実は凄く奥行きがある深いはずの内容であっても、既に知っている・聞いたことのある言葉の先にあると案外見落としてしまいがちです。研ぎ澄まされた感性で僅差・微差を感じて情報を拾わなければならない時代に、「そんなのもう知っているよ」的な思考、理解の遮断は危険です。
また会社に入り3年もすると誰でも一応一通りの仕事を覚えます。ほとんどの仕事はルーティーンですから惰性の中で仕事をするようになります。考えなくても仕事していけるのです。本人は工夫をしたり改善したり考えたりしているつもりになっていますが、実は何も変わっていない、考えていないということは多々あります。
「先は長いからゆっくり行こうぜ」的な世界、「どうせなにも言っても無駄だし」的な世界はこうした中から生まれます。3年も経って色々社内や仕事が見えるようになってくると「ここは手を抜いても大丈夫」、「どうせ意見が通らないからここはこの程度で・・」など妥協や否定に頭を使うこと自体が「仕事」だと錯覚している向きが多々あります。手抜き、現状満足というのは表現の違うだけで否定語の世界ですね。
背景
こうした否定語症候群が生まれる背景には大きく分けて3つあります。一つは生まれてから成人するまでに貰って来た言葉。一説には人は成人するまでに行動をとめるような言葉を148000回聞いて育つと言われます。「危ないからダメ!」「お前にできるわけない」「無理に決まってる」「止めなさい!」「だからお前はダメなんだ!」こうした言葉のシャワーを浴び続けてれば、新しいことに挑戦しなくなる土壌が生まれても仕方ないのかもしれません。
また日本の学校教育は正解を探す・覚える教育が中心です。16年間そうした世界に慣れ親しんでいれば、社会にでても正解はどこかにあるもの、会社や上司がくれるものという考えが静かに根付いています。答えを求めてしまうのです。さらに希望に燃えて会社に入っても意見が通らない、上司とソリが合わない等、こんなはずではなかった・・という状態が続くと、だんだん自分の立ち位置が見えてきて「先は長いから・・」「どうせ・・」という状態になって行きます。
会社にはこうしたワカッチャッタ世界の住民がいっぱいいます。組織ピラミッドでいえば上に行くほどこの「ワカッチャッタ世界の住民」がぎゅうぎゅうに詰まっていることになります。そう考えてみれば若いフレッシュな世代が育つはずありません。
営業は否定語の達人
営業は打率で勝負していますので、売れない場合も当然あります。しかし売れなかったらその売れない理由の説明を見事にしてみせなければなりません。言い訳をうまくしなければいきていけないのです。毎月あるいは毎日、その失注が、いかに自分の責任ではないかを考え表現していれば、責任を他に転嫁する達人になっていくのです。
こんな背景から「ワカッチャッタ世界の住民」=否定語族はこうして静かに最強の社内部族になっていくのです。まずは経営者自ら否定語を追放するということをテーマに掲げて全社で否定語追放に取り組んでいかねばなりません。
組織が若く、少人数であればあるほど着手しやすいはずです。楽をしたい、人のせいにしたいというのは人間の本能ともいえますが、これに抗う勇気を持ち、蔓延しない仕組みを先に作っていくことが実は企業の活力をそがない戦略になります。音もなく忍び寄るワカッチャッタ世界の住民へのお誘いを断るのはまずは経営者自ら、と言う気持ちで素直に振り返る事から始めてはいかがでしょうか。
上記の記事は弊社の根幹となる哲学「喜びの帝王学」を基にしています。